【自宅墓/許可】自宅墓に許可は必要?自宅墓に関係する法的解釈

自宅墓の認知度が上がり自宅墓を選択する人も増えてきましたが、まだまだ情報が十分ではなく、躊躇いを感じている方もいるかと思います。

ここでは自宅墓が法律ではどのように扱われているか答えていきます。

自宅の庭にお墓は建てられない?

お墓に関する法律には「墓地、埋葬等に関する法律」が有ります。

この法律の4条には「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」とあります。

そのため、「墓地」として認可を得ることが出来ない自宅の土地にお墓を建てることはできません。

では、自宅敷地内を「墓地」として申請し認可を得ればよいのでしょうか?

個人墓地は、昭和12年12月17日付警保局警発第154号通牒をはじめとする各種通達・通知において、明らかに特殊であると思われる場合(たとえば、「山間等人里遠く離れた場所で、墓地が存在していない場合」)を除き、新設の許可は認められず、廃止、もしくは移転・統合がすすめられてきた経緯があります。

殆どの治自体が墓地の許可は地方公共団体と宗教法人のみとしており、個人墓地の新設は認められていません。

自宅の敷地内に墓地として認可が下りない以上、自宅にお墓を建て、埋葬することは出来ません。

では、自宅墓と呼ばれるお墓は何故問題が無いのでしょうか?

自宅にご遺骨を置くタイプのお墓(自宅墓)は問題ない?

自宅墓と呼ばれているお墓は室内に置くタイプのお墓です。

「墓地埋葬法」で禁止されているのはご遺骨を墓地以外の場所に埋葬又は埋蔵することです。

自宅にご遺骨を置くことは法律で禁止されていません。

お墓への埋葬を希望している方でも納骨日まではご自宅にてご遺骨を保管されます。

また、「離れるのが寂しい」など気持ちの整理が付かない場合や、理想とするお墓が見つかるまでの間など、何年もご遺骨をご自宅にて保管されている方もいらっいます。

ご遺骨の所有権

ご遺骨を自宅にて供養・保管したいと思ってもご遺骨の所有権を持つか、所有権を持つ者の同意がなければ自宅にてご遺骨を保管することは出来ません。

ご遺骨の所有権は民法897条に定められています。

第897条
1 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

遺骨は一般の相続財産とは関係なく「祖先の祭祀を主宰すべき者」1人に所有権が認められます。

「祖先の祭祀を主宰すべき者」は「祭祀承継者」と呼ばれ一般の相続財産とは区別されており、必ずしも相続人でなくても構いません。

上記民法によると「祭祀承継者」になることが出来る順番は①被相続人が指定した者②慣習によって定める③慣習が不明なら家庭裁判所が定めるとされています。

高知地裁平成8年10月23日判決では「被相続人の意思により示された祭祀の主宰者に帰属する」として内縁の妻に遺骨の所有権を認め「自分が慣習上、祭祀の主宰者である」とした被相続人の長男の主張を退けています。 

これは裁判所としては民法897条に定められた順番を尊重すべきことを示したのです。

自宅墓を選択した場合のお墓の所有権

祭祀承継者に選ばれると、祭祀承継者になることを拒否することはできません。

相続人は相続放棄の手続きにより、相続人としての地位を拒否することができますが、祭祀承継者には相続放棄のような制度はないからです。

とは言え、祭祀を主催する義務を負うわけではなく、「祭祀承継者」の判断で行うか行わないか決めることが出来ます。制度上は承継者が祭祀を主宰しなくても罰則が課されることはありません。

しかし、後々承継したお寺のお墓に埋葬したいと思う場合は、お寺の意向も確認しておく必要があります。

お寺側が「葬儀を仏式で行わないならお墓へは埋葬させない」「いずれお墓に埋葬するなら法要は行って下さい」など求めてくることもあるからです。

それは、宗派に関係なく各お寺の責任者である僧侶(住職)の判断によって変わります。

「墓地埋葬法」13条 には「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない」とあります。

裏を返せば「正当な理由」があれば拒むことは可能ということになります。

では「正当な理由」とはどのようなものでしょうか??

神戸地裁平成5年7月19日判決では、具体的には新たな埋葬等を行う余地がないこと、申込者が墓地等の正当な管理に支障を及ぼすおそれがある場合に正当の理由があると判断されています。

また、津地裁昭和38年6月21日判決や仙台高裁平成7年11月27日判決では、異宗の典礼の施行を条件とする依頼あるいは無典礼で埋葬蔵を行うことを条件とする依頼に対しては自派の典礼施行の権利が害されることをもって埋葬等を拒否する正当の理由にあたる旨判断しています。

お寺には典礼施行権があります。全てのお寺がそうではありませんが、お寺によってはその権利を盾に「仏式葬儀をやらないのであればお墓へは納骨させません」という所もあります。

今は自宅墓で供養をし、後々は承継したお墓に埋葬したいと思う場合はお寺に事情を話し理解を求める必要があるかも知れません。

菩提寺以外の埋葬・散骨という選択

菩提寺のお墓へ納骨する場合は檀家である必要があったり、檀家としてお寺を経済的にも支えなくては行けない義務が生じたり、お墓を維持するための費用が生じたりと負担を感じる方がいらっしゃいます。

その場合、公共墓地・民間墓地・菩提寺以外の寺院墓地にお墓を用意し、埋葬することも出来ます。

今は永代供養墓(合祀墓)や納骨堂、樹木葬など良心的な値段のお墓も増えており、システムも現代人の生活に負担の少なく「宗教・宗派問わず」「管理費不要」など、縛りや負担が少ないよう考えられています。

また、散骨も今では業者も増え、身近な故人を送る形となっています。

散骨の法的解釈

散骨は刑法の「遺骨遺棄罪」に抵触するのではないかという議論がありましたが、1991年に法務省は「刑法190条の遺骨遺棄罪の規定は、社会風俗としての宗教的感情を保護するのが目的であり、葬送のための祭祀のひとつとして節度をもって行われる限り、(散骨は)遺骨遺棄罪にはあたらない」という見解を示しています。

散骨は刑法に反するものではありませんが、一部地域の条例によって行うことが出来ない場所があります。また、風評被害などで他者へ不利益を与えてしまう恐れのある場所では行えませんので場所は充分に検討し選ぶ必要があります。

また、散骨はご遺骨だと分かる形で行うことは出来ません。ご遺骨だと分からない様に1mm~2mmの粉状にし撒く必要があります。

ご遺骨を粉末化すること自体は刑法第190条死体損壊罪の「遺骨」を「損壊」することに形式的には該当しますが、散骨や自宅供養、分骨など、供養の準備として行われる焼骨の粉骨は刑法第35条の「正当行為」として違法性が阻却され、死体損壊罪は成立しないとされています。

◆ 結論 ◆

法律上、お墓を自宅の庭に建て、ご遺骨を埋葬することは出来ませんが、自宅墓として室内にご遺骨を保管することは可能。

お墓のこれからの形

テクノロジーの発展により、これから社会は急速に大きな変化を迎えるとされています。また、2040年には超高齢化社会に突入し、経済的にも苦しい時期を迎えます。それに伴い、お墓のあり方も変化を見せていくと思われます。周りの意見に流されるまま今までの葬儀やお墓のあり方を継承していくだけではなく、自分たちの考えや生活に即した供養のカタチを自らに問いかけ選択する必要があるかも知れません。

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