「お坊さんの居ないお葬式」貴方の理想の葬儀・埋葬は?

「仏式葬儀」離れを考えてみる。

今年2月から全国的に放送された「お坊さんの居ないお葬式」のCMをきっかけに、「葬儀」のあり方について考え始めた方も多くいらっしゃいます。

「仏式葬儀」を離れ、宗教宗派や慣習に捕らわれない葬儀を望むのは何故でしょうか?また、「仏式葬儀」を望まない場合の葬儀や埋葬を行う手段や方法にどのよ様なものがあるか、考えてみましょう。

仏式葬儀に疑問を感じるきっかけ

〈 信仰の欠如と経済的負担 〉

仏式の葬儀が庶民でも行われるようになったのは江戸時代中期です。キリスト教締め出しのため江戸幕府が制定した寺請制度により檀家制度が確立していき、仏式葬儀が行われるようになりました。

しかし、宗教離れが進んでいると言われている今日、仏教も例外では無く、教えの尊さを知る機会も無く、信仰心が希薄となり、お寺は「葬式」「墓参り」「法要」の時にしか必要とされない場所へと変化していきました。

信仰心が薄らぎ、仏式で葬儀をする意味を理解しないまま、近親者が亡くなった場合、いざ仏式葬儀を執り行おうとすると高額な出費と向き合うことになります。通常、人は意味や価値を感じない物にお金を支払いません。「仏教」がどのようなものか知識や信仰心が薄いまま、葬儀や埋葬に経済的負担をかけられてしまうと、必然的に自分にとって「必要性や価値があるものか?」を問うことになり、「必要のないもの」と判断すれば「出費を回避したい」という思考が働きます。

仏式葬儀に掛かる費用

一般財団法人日本消費者協会が行った「第11回 葬儀についてのアンケート調査報告書」 によると、2017年時点で葬儀費用の全国平均は、195.7万円(近畿189万円)でした。

内訳は以下の通りです。

  • 総額の葬儀費用:195.7万円(近畿189万円)
  • お通夜からの飲食接待費:30.6万円
  • 寺院への費用:47.3万円
  • 葬儀費用:121.4万円

出典:一般財団法人日本消費者協会 第11回「葬儀についてのアンケート調査」報告書 2017年(平成29年)1月より

参考:一般財団法人日本消費者協会 葬儀事業者における葬儀費用に係る表示の適正化について

寺院への費用47.3万円の内訳は以下の通りです。

読経料(どくきょうりょう)

戒名料(かいみょうりょう)

お車代(おくるまだい)

御膳料(ごぜんりょう)

お経や戒名の意味や価値がわからず、これらの高額の出費を求められる状況が腑に落ちないまま、慣例というだけで仏式葬儀を行うことに戸惑いを感じるのは、おかしな事ではありません。

〈 納骨拒否 〉

そこへ、さらに菩提寺から「お坊さんの居ないお葬式」を行ったことにより、「納骨拒否」が生じてしまうと、お寺にお墓を持つことの意味をも見失ってしまいます。

お寺の取り組み

寛大に対応してくれるお寺もある。

勿論、寛大に対応してくださるお寺も存在します。お寺側へ丁寧にお願いすることにより仏式葬儀を行わなくても代々墓への納骨を了承してくれるお寺も存在します。また、お寺であっても「宗教・宗派問わない」檀家にならなくても良い、低予算で納骨できる「永代供養墓」を用意してくれていることもあり、仏式葬儀を行わなくても、寺院墓所内に「無宗教でも納骨」「低予算でも納骨」は不可能ではありません。

檀家制度改革に取り組むお寺もある。

埼玉県熊谷市にある見性院は、宗教の自由を尊重したお寺で、「檀家制度」を廃止したことで有名なお寺です。寄付・年会費・管理費は不要とし、「宗教・宗派・国籍」問わずお墓を分譲しており、永代供養納骨堂は合同納骨を税込み30,000円で生前受付可・郵送可で対応してくださるお寺です。寺院内で「仏教徒」でなくても安心してお墓が持てます。

勿論、法要も可能ですが、こちらの寺院は金額が明瞭なことでも話題となりました。金額がはっきりしているため、仏教葬儀の計画も立てやすくなっています。

また、静岡県伊東市の願行寺は1万円で13回忌法要までの永代供養をしてくれるということで話題となりました。料金は1万円に手数料5000円(税別)で合計1万5400円。追加料金は一切不要とのこと。

他にも、仏式葬儀を行わなくても「宗教・宗派を問わず」低予算で納骨のできる仕組みを取り入れているお寺も増えています。

「葬儀をやり直せ」直葬での納骨拒否の正当性

お寺によりますが、「仏式葬儀」を行わなくても代々墓へ納骨してくれたり、代替案を示してくれる所もありますが、一方で「仏式葬儀」をしない場合、お墓への納骨を拒否するお寺も勿論存在します。それは、何故でしょうか。

お寺とは、仏教の宗教活動の場所です。仏教の仏像を安置し,僧尼が修行し,また居住する場となっています。また、お寺は檀家の信仰心や経済的支えがあって成り立っており、葬儀や法要から入るお金は、お墓に眠る先祖を供養てしくれる住職・僧侶の生活を支え、檀家にとって大切なお寺の維持管理に当てられます。単に「お墓のある場所」ではありません。

「仏教徒では無い」「経済的な理由により仏式葬儀や法要の費用が捻出できない」など檀家としての責務を果たせない状態で「ご遺骨だけは菩提寺にあるお墓に納骨しよう」としても、納骨を拒否されてしまうのは、菩提寺側にも理由はあるのです。

「納骨拒否」は法的には許されるのか?

納骨拒否は「墓地、埋葬等に関する法律」の13条により、「正当な理由がなければ拒んではならない」とされていますが、納骨拒否が認められるケースがあります。

典出:厚生労働省 墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)

納骨拒否が認められる正当な理由には、

①「埋葬等を行う余地がないこと、申込者が墓地等の正当な管理に支障を及ぼすおそれがある場合」

②「お寺の宗旨宗派とは異なる形式や無宗教での納骨を希望する場合」があります。

仏式の葬儀を行わない場合、菩提寺より②を主張され、実際に「納骨させない」と納骨を拒否されたり、「葬儀(仏式)をやり直せ」と言われることがあります。

「仏教」は宗教であり、信仰心のない者や他宗教の者を拒むことは理解できます。また、お寺側からすると「代々大切に供養をし、お墓を管理し、守ってきた」という思いもあります。

では、「仏式葬儀」を行わなかったことで「納骨拒否」をされた場合は埋葬をどのようにしたら良いのでしょうか。

宗教・宗派を問わない、お墓の選択

先ずは、菩提寺にお墓があり、納骨を希望する場合で、仏式葬儀を行わない場合は、事前に菩提寺の僧侶の考えをお聞きし、仏式葬儀でも納骨してもらえるか判断します。仏式葬儀でも納骨して頂けそうな場合は、感謝を示しつつお願いします。菩提寺が納骨を拒否した場合は他の方法を選択することになります。

近年、お墓の形やシステムも多様化しており、「宗教・宗派を問わないお墓」が増えてきています。また、民営霊園や公営霊園のお墓や納骨堂、合祀墓、「樹木葬」は人気があります。

海洋・森林散骨を選択される方も多く、散骨はルールさえ守れば、業者に頼まずともご自身で行うことも出来ます。

菩提寺から納骨を拒否された場合は、先祖が眠っている代々墓には納骨せず、他のお寺へ「永代供養墓」への納骨をお願いするという方法があります。「永代供養墓」は管理費無用・宗教宗派問わずとしているところが多く、リーズナブルで30,000円程度で申込みが出来ます。

自宅墓という選択

慣習に従い、四十九日法要や一周忌法要を目安に納骨をしなくてはいけないという強迫観念に捕らわれる方もいらっしゃいますが、これらは目安であり、本来、納骨を焦る必要はありません。あまり知られていないかも知れませんが、お墓の無い方、若しくは代々墓への納骨を望んでいない方の多くは、ご自宅にてご遺骨を保管されています。

代々墓への納骨を選択しない場合は、ご遺骨を手元に置いた状態で、故人や自分、家族にとって何が一番良いのか考えることが出来ます。

菩提寺があり、代々墓を承継している場合では、離壇(檀家を離れる)、墓じまいをする場合は費用が生じます。しかし、他の親族の意向を尊重し、離断せず、墓じまいせずにご自身や、身内のご遺骨を他のお寺の永代供養塔や散骨をすることも可能です。

仏式葬儀をするしないで、代々墓に納骨出来るかどうかが決まってしまう場合があるので、後々、代々墓に納骨する可能性がある場合は、菩提寺との関係が崩れることのないよう、菩提寺の考えを聞き、どのようにすると折り合い、納骨が可能となるのか確認しておく必要があります。

他宗教や無宗教、仏式葬儀を要求するかしないかは、各お寺のご住職、僧侶の考え方によるところになります。

死生観は個人によって違う

しかしながら、死生観は個人によって違うもの、先祖や親の死生観や信仰心に影響を受ける事があっても、生死をどのように考え、何を信仰するかは個人の自由です。「お坊さんの居ないお葬式」を望む場合で納骨するお墓が無い場合は、慌ててお墓を用意しようとせず、ご自宅でご遺骨を保管した状態で埋葬方法をよくご検討されることをお勧め致します。慌てて必要では無い高価なお墓を購入したり、望まない墓所へ納骨する必要はありません。

ご遺骨の自宅保管関連記事は下の「ご遺骨の自宅保管」をチェック

〈補足〉離断する場合の注意点

祭祀承継者(お墓や仏壇などを引き継ぐ人)が、寺院内のお墓を望まず、「改葬」や「墓じまい」を行い檀家としての関係を解消する場合、離断料をお寺から求められる場合があります。

離断料

金額はお寺によって異なるようですが、15万円前後(お布施3回分)となることが多いようです。お墓を契約をした際、契約書に「離断料」の記載が無い場合は支払う義務は生じませんが、改葬や墓じまいをスムーズに進める為に、今までお世話になってお礼としてお支払いするのも良いかも知れません。「改葬」の場合、菩提寺に「改葬許可申請書」へ署名捺印をお願いすることになります。

高額の離断料を請求される場合も存在します。その場合は契約書をよく確認し、事が拗れそうであれば弁護士に間に入ってもらう事も良いかも知れません。

出典:檀家制度 葬式仏教

参考記事

ライフドットのインタビュー記事

『お坊さんのいないお葬式』運営元のNINE&PARTNERS株式会社 代表取締役社長 大森 嗣隆氏 のインタビュー記事です。

「ハスノハ」お坊さんがこたえるお悩み相談サイト

「葬式仏教」という言葉がありますが、「ハスノハ」でコメントされている僧侶の方々からはその様な姿勢は感じられず、寛容なご意見だったり、「お坊さんは必要だよな、と思ってもらえるように精進します」等であり、「お坊さんのいないお葬式」を過度に批判するような意見は見受けられませんでした。

exciteニュース 

葬儀新時代! 宗教にとらわれない「お坊さんのいないお葬式」 ナインアンドパートナーズが国内初展開 より

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